者は白木の蓋で差し覗く顔を追い払うように閉め出して金槌で蓋に釘を打ちつけた。間もなく、玄関から門の方へ運ばれていく棺に日の射しているのを眺めながら、矢代は去るもののこの遽しさだけはもう誰のものでもないと思った。
「じゃ、これから火葬場へ行かねばなりませんから。今日はこれで――」
 千鶴子に父の骨を拾って貰いたいと思っていたことも、さすがにそれだけは云いかねて、矢代は自動車に乗るときにそう塩野と千鶴子に待たせた詫びを云った。
「実に突然だね。お父さん御病気だったの。」と塩野は訊ねた。
「いや、君と侯爵邸で別れた次の日だ。脳溢血でね。医者はこの雪がいけなかったというのだが――」
 道の片蔭にまだ消え残っている雪を見降し、矢代は、いや、雪だけではない、柄になく自分が父を喜ばせた結果がこの死を導いた主な原因だと思えて疑えなかった。
 それも塩野の祝賀会へ出席した夜に起った、ある偶然な自分の喜びが父に伝ったことであった。しかも、塩野の祝賀会へ最初に矢代を誘ったものは、他ならぬ千鶴子だった。
「邪魔にならないようなら僕らお骨拾わせて貰っていいんだが、自動車空いてるかしら。」
 塩野は千鶴子の心中を
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