してから次ぎに意味もなく自然に彼と眼が合った。
「どうも有りがとう。」
 と矢代は少し前に動き低く二人に云った。幸子が眼ざとく彼の顔を窺うのを矢代は感じたが、母はまだ千鶴子を塩野の夫人と思う様子で鄭重に黙礼を返して、また続く次の客に眼を移していくのだった。
 塩野たちが焼香を済ませて出て来たとき、矢代は暫く休んでいって貰いたいと云って、その場はまだ喪主の位置を崩さず、門まで一応出てゆく彼女の後姿を見守りながら、ともすると葬式と結婚とが一時に襲って来たような混雑した気持ちを感じ、むしろ、今日はこのまま千鶴子に帰っていって貰った方が、しめやかな落ちつきを得たかもしれないと後悔さえするのだった。しかし、まだ向うの両親が二人の結婚を許さないとしても、千鶴子にだけ今も変らず結婚の意志があるものなら、ひそかに自分の父の骨だけなりと拾って貰いたい心も強く動いた。
 告別式が済むともうゆっくりしている暇もなく霊柩車が来た。
「さア、どうぞ。お棺に釘を打ちますから。」
 葬儀屋の若者が家族のものらを急がせて云った。棺を埋めた花の中で微笑している父の顔の傍へ、幸子はより縋るようにして泣いた。母も泣いた。若
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