、一日のうちにはどこかへ来ている親しむべき何ものかかもしれない、とそんなに思ったりして自分をなだめ、彼は勇気がまた出て来るのだった。
 告別式は二時ごろから始った。矢代は玄関前の喪主の位置に立って来る人人に挨拶した。参列の人人の自動車の黒い胴が、常緑樹に溜った雪の中から隠見した。焼香のつづく間も廂から落ちる雪解けの雫の音が絶えずしていて、庭の雪に照り返った日光をきつく受け、出て行く人人の面が誰のも明るく門から左右に別れていった。
 焼香の潮どきが一段落過ぎたと思われるころ、思いがけなく千鶴子が塩野と一緒に這入って来た。この日の千鶴子は珍らしく紋服で、白い襟もとの重ねがいつもより大人びて美しかった。帯の結びもすらりと伸びた姿勢をよく纏め、矢代は暫く別人を見るような動悸を感じて、進んで来る千鶴子を眺めていた。塩野は応対に馴れた眼で、あたりの人人を見ながらゆとりのある足つきだったが、その少し後から俯向いて来る千鶴子の裾の翻る白さが、身綺麗な貞淑さを感じさせ、見ている矢代の気持ちも冴え緊った。
 二人は矢代たちの前まで来ると立ち停った。そして、塩野は彼に黙って礼をすると、千鶴子は矢代の母に礼を
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