りやんだ雪の中で、矢代の家の中はめまぐるしい多忙さだった。地方から出て来た親戚や父の友人、その他会社関係の悔み客との応接などと彼は眠る暇もなかったが、突然の父の死に見舞われた最初の打撃のためか、彼は、忙しさの中でも虚ろなものを抱きかかえて坐っているような思いがつづいた。殊に母が一層そうだった、妹の幸子は病後のことでもあったから、直接忙しさの中へ立ちよらせぬことにしていたとはいえ、それでも何にかにと母に代ってよく立ち働いた。
 葬儀は親戚の敏腕な若い銀行員を委員長に頼んであったので、万事矢代の知らぬ間に順調に進んでいった。勿論、式は父の宗旨の真宗にすることにしたが、彼は自分のときならこれも神式にしたいとひそかに思った。
「わたしはお宅の旦那と、門口でお昼にお目にかかって立噺したばかりですよ。それにその夜亡くなられたとは、もうびっくりして、世の中が恐ろしくなりました。」
 勝手口で母にそう云っている酒屋の主人の話も聞えるままに、矢代は告別式へ出る袴をひとり部屋で穿いていた。そこへ女中が悔状の郵便物を沢山揃えて小机の上に置いていった中に、一通千鶴子から来た見覚えの封筒が眼についた。彼はすぐそ
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