ら蕗が勁い芽を出し、傍の小石もその芽に押し動かされた様子が見えた。枯草の間を流れる水の面に温かそうな霞が漂い、冬もようやく去ろうとしている気配があたりの草叢から感じられた。
この日の労働は彼の身に応えて全身に疲れが廻ったが、外国から帰って以来、矢代は初めて心に落ちつきを得たように思われた。夕食前風呂に這入ったときも、体を洗うのも大儀に感じたほどだったが、気持ちは常になく晴やかだった。
「今日みたいな気持ちの良い日は、僕は初めてだなア。」
と風呂から出たとき、身体を拭き拭き矢代は母に云った。
「たまに働くとそういうものですよ。」食事の用意をしている母は笑った。
「土の匂いがいいんですね。」
そう云いつつも、やはりそれは近ごろ初めてしてみた正直な働きのためだと矢代は思った。自然に対い恥じざる行いに少しばかり接近したのだと思ってそっと黙り、彼は新しい襯衣に着替えて帯を強く締めてみた。夜になってから気温が急に下り雪模様の冷えた空気が室内にも襲って来た。食事のときは、この夜は珍しく父の部屋で揃いの高膳だった。父は晩酌を矢代に奨め、
「どうだい、いっぱい。」
と酌をしてくれた。父と一緒の
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