よ被告の席へ引き出された羽目となっている自分の現状に、迂濶に食堂で道徳のことなど饒舌って自己弁護に落ちた報いが、とうとうこのような結果になったと観念もするのだった。
 由吉と外交官の速水は傍で国際情勢の談をしていた。その会話の流れはときどき一同の間で、経済のことにも及ぶことがあっても、久木男爵だけは、自分の一番明るいその方の話には飽き飽きしていると見え一言も加わろうとしなかった。そして、その間斜めに体を崩し、天井を仰ぎつつ煙草をひとりぷかぷか喫して黙りつづけていたが、また矢代の方へのり出して来るとこう云った。
「あなたのさっきのお話、あれはなかなか面白かったですが、あの続きをも少ししてくれませんかね。わたしは近ごろそういう風な話からあんまり遠ざかっているので、こういう機会でもないとお話も出来ないのですよ。」
 矢代は特別なことを前から話したわけではない自分を思い出し自分の話のどこがこの老人の気に向いたのかと一寸考えるのだった。
「僕のお話ししましたことは、そう特殊なことじゃありませんでしたが、とにかく、僕らの時代のこととしてもそれ相当のやはり考え方があるものですから、ついそれを話したい
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