対象を探すのですね。たとえば、僕は一寸ばかし海を越えて西洋を見て来たばかりに、日本をめぐっている海の水を見ると、どれもみな岸べに打ちつけて来ているキリスト教の波に見えるのです。実際、日本を一歩出ると、現在生きている文明の波というものは、キリスト教を中心とした大海の波ですから、これに対する態度を定めるだけでも、相当な覚悟なしにはいられないときになって来ておりましょう。そこへまた科学です。僕らは自分の国のことを外国のこととして、もうこれ以上は考えているわけにはいきませんですからね。」
 矢代はこう云ううちにも話していることが、久木男爵に向うより、ともすると後方で聞いているにちがいない千鶴子に意識が向いてゆくのを覚えるのだった。そして、それはまた同時に彼女を虐めることとはいえ、それ以上に苦しいことには、この夜はカソリックの大本山のノートル・ダムを写した塩野の写真展の祝賀会であってみれば、むしろ千鶴子より塩野の祝賀の宴を強く射る失礼な結果となっていることに気がついて不用意な失言を、そのまま続ける勇気が出ず突然彼は口を閉じた。久木男爵も敏感にそれと察したらしかった。
「やはりわれわれに難しいのは
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