、間違いに見えるだけだと云うのだよ。僕は君より、もっと科学主義者だと思えばこそ、君のように安っぽく科学科学といいたくないだけだ。君は科学というものは、近代の神様だということを知らんのだよ。それが分れば人間は死んでしまう。」
「ふん、そんな、科学主義あるかね。」
外っ方を向くと、そのまま何も云わなくなった久慈の顎から耳へかけて筋肉が絶えずびくびくと動いていた。
「随分お変りになったのね。毎日パリでそんなことばかり云い合いしてらしたの。」
と千鶴子はおかしそうににこにこして矢代に訊ねた。
「まア、そうです。ここじゃ、こんな喧嘩は楽しみみたいなものですから、気にしないで下さい。いつでもです。」
「じゃ、これからあたし、毎日そんなことばかり伺わなくちゃならないのかしら。いやだわね。」
と千鶴子は眉をひそめ窓の外の市中を眺めた。
「あなたがいらっしゃれば、云わないような工夫をしますよ。」
「いや云うとも。」
と久慈はまだ腹立たしさの消えぬ口吻で何事か云いたげだった。
千鶴子には日のよくあたる部屋をと思って、矢代はルクサンブールの公園の端にあるホテルを選んでおいたが、それが千鶴子には
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