代はこの歌が好きだった。もう何の飾りもなく心のままに歌い、胸中澄みわたっている人馬一体となった爽やかな調べの籠った素朴さがあった。それも古人の歌ではなく現代人の作であるところに、心を別け持ってくれている嬉しさを矢代は感じた。
「しかし、どうも中国も危くなっているね。スペインの内乱とは関係があるよ。」
とこう云い出したのは由吉だった。
「それはある。他人事じゃなさそうだ。」
と外交官の速水が、高い尖がった鼻を手巾で拭きながら云った。
「これで世界歴史を通じて調べたものの云うことだと、二年間の平和を得るためには、人間は二十四年間戦争をしていることになってるそうだよ。そうしてみると、平和というものは、実に宝だ。徳川時代は三百年の平和だが、そんなのは殆んどないといっていいんじゃないか。」
会話の進むにつれて、矢代は、パリの真紀子の部屋で中国人の高有明と議論をしたある一夜のことを思い出していた。高は間もなく帰るころだと思うと、なおよく彼とも話してみたいいろいろなことが泛んで消えなかった。
しかし、丁度、こういう緊張した話の盛り上って来ているところへ、廊下の方から久木男爵が、
「どうも遅く
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