なりました。」
と云って一同の方へ歩いて来た。
「今日のノートル・ダムのお写真は、あれは苦心をされたでしょうね。わたくしもあのお寺を写してみたことがありますがいつ見ても良いものは良いですね。」
男爵にそう云われて、塩野は答え難そうに笑ったままだった。
「どうですか。写真の方でも外国人と日本人とは、見方がだいぶ違うでしょうね。」
と男爵はまた鋭い質問を続けて塩野を見た。
「違いますね。一度フランスの専門家に、写したものを選んでみて貰ったことがありましたが、これが良いと云って抜き出してくれたものは、どれも向うで苦心をして撮ったものじゃないんですよ。日本でもいつでも撮れるものばかし抜いてくれるので、何んのために自分はフランスまで来たんだろうと、しばらく僕も苦しみました。」
若い塩野はその当時の苦しみを今もなお続けているらしく彼には珍らしい暗い表情になってうつ向いた。
「いや、それは画家もそう云いますよ。フランスへ行くと、却って良い画が描けなくなると云ってた人がありましたよ。」
「人間もそうかもしれないぞ。」
と由吉はパイプにきざみを詰め詰め云った。みなどっと笑い出した。
その波立
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