手のつけようもない異様な気味悪さで乗しかかって来るのだった。
勿論、手紙の終りには、そういうことを勇気を出して正直に書いた自分に対して、気持ちを悪くしてくれぬようにとあったが、それでも矢代は身の沈む思いで寂しかった。これほど希いをかけて自分の愛して来たものが、こんな祈りを毎日していたのであろうか、またそのために身の慎しみを今まで千鶴子が支えつづけて来られたのだと思ってみても、矢代は苦しくなり、そぞろに怖れを感じた。しかし、もう彼はどうしようもなかった。
その日は一日矢代は本が読めなくなった。夕暮になってから彼はランプのホヤを磨きにがかった。油煙で黒く煤けている部分に布を通し、呼吸をガラスにふきかけては拭くのだがその間も、曇りの消えて透明になってゆくホヤに窓際の雪が映って来ると、また彼は千鶴子の誓詞の言葉を思い出した。
「異端者。」
何んとなく矢代はこう呟いて自分を省るのだった。それは「不徳漢」という一種の刻印を、誰からか無理に額に打ち込められたことと同じだった。今までにもこんな言葉はたびたび見た。しかし、今のように直接自分に向けて云われたことはまだなかった。彼は初めて異端者と呼ば
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