ごろは早く外国へ行きたいような素振りもあるんですのよ。あたしにも、一緒にまた行かないかなんて、云うんですの。」
由吉の冗談だとばかり、気軽く千鶴子も思って云ったつもりらしかったが、矢代にはそれがかなり強く響いて応えた。たとい由吉の冗談とはいえ、そんな空気も宇佐美一家の中に漂っていることは見逃しがたいことだった。それも他の男と結婚を迫られている現在の千鶴子の唯一の逃げ場も、再度の外国行き以外にないことを見抜いている、由吉の同情した誘いかとも、矢代には考えられた。また切羽つまれば、由吉の誘いも馬鹿にはならぬ、事実となりそうなものをも含んでいた。
「僕の知人で一人、日本へ帰ると一ヵ月東京にいたきり、すぐまたパリへ来てしまったのがいますがね。ところが、またそれとは反対のもいて、日本からパリへ着くと、次の日にもうパリがいやになって、半月目に日本へ戻ってしまったのもいますよ。人というものは、いろいろなものだなアこれで。」
矢代は千鶴子に、あなたは今はどちらの方かと訊ねるつもりだったのに、そういうことを云っては秘かな狼狽の色を蔽うのだった。
「どうしてですかね。そんなに違うの。」
と槙三は訝し
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