そうな真顔で訊ねた。
「さア、それは僕も分りませんが――やはり、地球という球体を日本という中から外へ出ることと、外から中へ入ることと、違うようなものじゃありませんか。」
 数学専門の槙三には、そんな説明の仕方も、却って直接的な云い方だと矢代は思って云ったのだったが、槙三は黙っていた。
「つまり、たとえば千鶴子さんが外国へ行かれるのと、僕が行くのとでは、これで思いも余程違っていると思うんです。千鶴子さんのは、小さいときからのカソリックの躾けで行くので、そういう人のは、外国へ行くと言っても実は中から外へ出ることで、僕のような日本人の躾けのままだと、外から中へ入ることになるのですから、同じ行くにも感覚からして違って来ますからね。物理学にもたしか、球面を外から中へ入るのと、中から外へ出る違いと、二つの相違があったと記憶してますが、どうですか。」
「それはあります。」と槙三ははっきり云ったまま、このときはいつもと違い急に微笑が顔から消えて緊って来た。
 矢代はこの槙三という兄――それはあるいは、いつか自分の兄となるかもしれぬ青年の中心の考えを、実は少し世間という実社会の中心へ引っ張り出して、触れ
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