ゆかった。
自然薯のとろろ、こんにゃくの白和、生椎茸の揚物など、こんな手数のかかるものは茶店の老婆に届けて貰うことにして、矢代は小屋の燠火で鶏の丸焼をするつもりだったが、料理にかかるには時間が少し早すぎた。小屋の床下と地面に積った雪との隙間が昨夜の雪ではまだ埋らず、下から吹く風に小屋も寒かった。
矢代は時間のある間、また朝の日課の調べ物にかかった。一日の読書の時間中、何かまだ知らなかったあることを一つ見つけた日は、先ずその日を空費しなかったと忍耐するこのごろだったが、彼はこの日の部分では意外に大きな拾い物を一つした。それは十三世紀の宗教史の中から遅まきながらも聖トマスという人物の思想と働きとを見つけたことだった。この人物はそれまでのキリスト教からその含んでいた東洋の神秘思想を抜き去り、代りに十三世紀のカソリックに初めてギリシアの主知主義を導き入れた。彼は、人間というものは霊的世界と物質世界をつなぐ紐帯物だと眺め、神の世界に入るためには、人人の感覚の受け取る物質の秩序を科学的に極めて後に、次第に高きに登ることを主張して、ルネッサンスの科学の勃興に決定的な力を与えた主要な人物だった
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