以外に先ず矢代には一つも見つからなかった。このようにして矢代は暇を見てはだんだん古神道の書物を買い漁るようになるのだった。


 目黒で千鶴子と会ってから二週間ほどたったある日、彼女から矢代に簡単な速達が来た。それには、塩野が駿河台の病院へ入院したので、明日見舞いに行きたいと思うから、あなたもそのとき来てほしいと書いてあった。とうとう来たかと矢代は思った。そのうちに君も入院するから気をつけるようにと、先日云って別れたばかりの直後だったので、およそ病因は彼に分っていながらも、冗談の当りすぎた気味悪さ以上、来るものの来た必然さに、長旅の愁いの常ならぬ辛苦を今さら矢代は考え直した。科学的には、黴菌の少い西洋から湿気のため黴菌の巣窟になっている日本へ、急激に帰ったものに起る、あの特別な不明病ということにされているようだったが、しかし矢代にはそうは思えず、やはり、それはある選ばれた純真な心の人物に、自然が恵んだ一種のみそぎだと解し、もし久慈でも今いれば、こんなところが二人の一番論争の種になるところだがと思って苦笑した。
 駿河台の病院へ矢代の行ったときは応接室にもう千鶴子が来て待っていた。医者に
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