のように、うるさい日日のもつれも生じる惧れなきにしも非ずと思われる。
「親も捨てよ、兄弟も捨てよ、主人も捨てよ。そして、ただ天主でうすを信ぜよ。」
 とこういう熱烈な口調の右近の言葉にしだいに動いて行くガラシヤ――そして、この世にも早や希望を持たぬ彼女の信仰の生活に似て、千鶴子も事あるごとに西洋の神を拝しつづけ、主人の自分を想うことが、取りもなおさずヨーロッパの幻影を失わぬためだとすると、戦国の世ならずとも自分の苦しみは忠興の悲劇とさしたる変りもあろうと思えなかった。それも、この宗教の相違の問題だけは、ともに二人が生活をしてみた後でなければ、互に分らぬことかもしれず、また考えようによっては、千鶴子のカソリックを信じる意向も、ただ近代の日本婦人が外国語を習うような、教養の部門の一つの趣味として考えているだけかもしれないと思われる筋もあった。しかし、いずれにせよ、千鶴子を改宗させる困難は、自分の改宗以上に努力を要することにちがいないことだった。
 矢代はこのような千鶴子と自分との結婚に一番難関となっている宗教のことを考えるときは、いつもまた大友宗麟が頭に泛んだりした。このフランシスコ宗麟は
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