ともに見ることもなくして死んでしまったそのスフィンクスの顔を見たときも、矢代は、
「ああ、これか。」
と思って、ただぼんやりしただけの自分だったと思った。しかしそのスフィンクスの背後に聳えていたピラミッドの暗闇の穴の中を潜ったときに、久慈に手を持たれ、ふっと苦しい呼吸でひき上げられていた千鶴子の姿を一緒に矢代は思い出す。そうすると、あの久慈は今でも千鶴子を愛しているにちがいないと、ふとそんなに思ったりした。その久慈が今もパリから千鶴子にせっせと手紙を出している姿を思った。またそれから来る自然な連想に伴って、千鶴子をガラシヤに似せて考える矢代には、ガラシヤにキリシタンを説いてやまなかった高山右近の心情も思い出された。そんなガラシヤと忠興と、その友人の右近の親しくした日日の交際も、また云いかえれば、千鶴子を中にした矢代と久慈との交際の日日と同様にちがいなかったと、矢代は、思うのであった。そして、このままもし、自分が千鶴子と結婚するような結果にでもなれば、右近のように西洋に憧れつづける久慈のことであるからは、あるいは、忠興とガラシャの間にカソリックの水をさし注いで絶えず二人をまどわせた右近
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