覚えまた千鶴子の顔を見た。
「矢代さん、あなたあたしの手紙御覧になって下さいまして。アメリカから出しましたの。」
「二通いただきました。いや、三通かな。」
「じゃ、あたしの上げた半分だわ。どうしたんでしょう。」
「それはどうも、たびたび有りがとう。」
 と矢代は一寸お辞儀をしてから千鶴子のコップにウイスキイを注いだ。千鶴子はそれも尻眼にかけ、呼吸の弾み上って来るような強い眸で矢代を見つづけるのだった。
「あたしね。あなたがもう帰ってらっしゃるにちがいないと思ってましたのよ。でも、いつまでも黙ってらっしゃるんですもの。先日からあたし、いつになったら帰ったというお手紙いただけるかと、そればかり待ってたんだけど、――」
「いや、とにかく、そんなことじゃなかったんですよ。」
 と矢代はうつ向いて云った。
「だって、あんなにお約束しておいたんですもの、まさか、そんなことまでお忘れになる方だとは、あたし思えないわ。」
 傍に兄や塩野のいることなどももう千鶴子は気兼ねも出来ないほどしゃんとしていた。
「しかし、まア、失礼はたしかに僕もしましたが、考えてもみて下さいよ。いくら僕だって、向うにいるときの
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