とも駄目のようだって書いてあるんだけど、どんなかしら。」
ふとまた沈みかかろうとする気力を、ひき立てては自分を支える努力で、千鶴子は矢代を見るのだった。矢代もパリ以来の二人の緊張の弛み垂るんだ面を支えようとして、快活な風を装ったが、それも千鶴子と視線を合せる機会が苦しくなってすぐ脱した。
「やはり僕の云ったことも正しかったでしょう。パリにいるときの方が怪しいっていうことが。」
さすがにそれだけは云わなくとも、矢代はそれを云う代りに微笑ともつかず、いたわりともつかぬ薄笑いのもれようとするのも、事実ここに現れたこの結果が二人を指し示している以上、それを蔽い隠すことも無駄だった。それもみな二人にとってはこの上もない不服なことだのに、しかし、与えられた儼とした判決の後では、も早やすること為すこと自分らには余興にも似たことなのだろうか。
こう思うと矢代は白白しくなるよりも、むしろ、二人をそんなにしてしまった何か云い知れぬその判決に対して、憤りを感じ、挑戦したくもなるのだった。
そこへ客部屋を挨拶に廻っていたこの家の主人の沢が入って来た。丸刈り頭で眼をしぼしぼさせ、とぼけ癖の表情のまま矢代
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