な立ち方ではなかったが、前から話の途中に席を脱す癖のあるのが千鶴子の欠点だと矢代は思っていたので、また始ったと思い気にかかるのだった。
 チロルの山の上での夜も、急に見えなくなった彼女を探しに行くと、氷河を向いてひとりお祈りをしていたことなど思い出し、千鶴子の心の中でカソリックはどうなっているのかと、暫く彼は憂鬱に食卓の上に肱をつき彼女の戻るのを待っていた。
 由吉は陶器に趣味があるのか出て来る食器を取り上げ裏を返した。そんなことなどいつもは矢代の気にならぬことだったが、それが千鶴子の兄の癖かと思うと自然に彼も注意した。
 千鶴子は化粧を直してまた部屋へ戻って来ると、出て行ったときとは違い、特長のある靨も明るく笑顔をひき立て、何か今度はしきりと矢代に話しかけたそうな視線だった。
「真紀子さんからその後お便りありましたか。」と矢代は訊ねた。
「ええ、ミラノからいただきましたわ。何んだかひどく寂しそうなお手紙よ。あなたには?」
「僕には二三日前に久慈から来ましたが、また喧嘩を吹きかけて来た。どうも久慈とは、とうとう碁敵みたいになりましたよ。」
「久慈さんからあたしもいただいたの。真紀子さん
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