ましょうよ。」
 何んとなく欅に云いたくて、塩野にそんなに矢代の云っている前へ、方向の違うバスが一台来て停った。欅に風があたり枯葉がどっと一斉に吹きこぼれて来た。バスの女車掌は下へ降りて踏台に片足をかけ、落ちて来る枯葉を仰ぎ見ながら、
「落葉する日か。いやに感傷的だわね、オーライ。」
 と運転手に手を拡げでひらりと舞うような様子でまた中に入った。塩野は去って行くバスを見送りつつくすくす笑い出した。枯葉は笑っている二人の肩口へなお音立てて舞い落ちて来た。


 千鶴子の家から近い場所をというので、矢代たちは、目黒のある料亭を選び、そこからまた塩野が千鶴子に電話で報らせた。このときは千鶴子の他に彼女の兄も来るとのことだった。ここの料亭は大樹に囲まれた暗さの割に、高台にあるため繁みの深さに陰鬱な気がなかった。ある旗本屋敷を改造したということだったが、そのためもあって廊下や間取りも槍を使うに適した広さの半面、書院の清潔さも失わず、苦心の払われた木口や壁など、天井の高すぎる欠点を補って居ごこちも良かった。
「僕は社の用でときどきここへ来たんだが、前にここは僕の知人だったんですよ。」
 矢代は塩野
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