だ、というようなことを云いましてね。何んでも、そうすることから、人間の愛情というものが、一層高尚に変ってゆくというのですよ。」
「それはまた東野さん、大きく出たものだなア。」
 と矢代は云いながら、塩野と一緒に笑った。が、日本人がヨーロッパ人の前で無理に話をさせられれば、今のところ、東野のようなことを云う以外に適当した穏かな話はないと矢代は思った。実際、矢代は西洋にいたとき、随分いろいろな事に人後に落ちず感心したが、一方どういうものか、いつも理由の分らない腹立たしさを感じた。しかし、塩野はそうではなく、一心不乱に一挺のカメラの眼に意識を蒐め、対象を研究しつづけていたのである。それもキリストの精神を中心にして、物理がどこよりも一番美しく結晶したノートル・ダムに対い、特にカメラの焦点を向けつづけていたようだった。
「君がヨーロッパにいるときは、なかなか豪かった。久慈や東野さんより、僕は君に一番感服したな。とにかく、君は立派だった。」
 と矢代は塩野から視線を反らせて低く云った。
「豪いも豪くないもないや。他の人とは違って、僕は貧乏だったんだから仕様がない。」
 塩野は後頭部へ両手を廻して笑
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