上、カソリックの大友宗麟のために滅ぼされた先祖の城のことを思う場合には――。


 手紙ではときどき矢代は妹を慰めていたが、見舞いに行き遅れていたことは、汽車に乗ってからもやはり後悔めいた気持ちがした。また婚期の遅れゆく幸子のことを考えるときは、今まで殆ど気もとめなかったことだのに、それが突如ただならぬ寒けとなって襲ったりした。自分が結婚する場合妹を先にしてからでなくては納りの悪さのあることなど、たとい考えることを避けていても、不思議と妹の婚期のことだけは心から脱けなかった。
「いや、自分は嫁など貰わぬ。」
 こういう気持ちも矢代にはあった。殊に千鶴子と会ってからは、他の誰かと結婚する意志など一層感じなかったとはいえ、それも家のことを考えるときは、徒労なことになりそうな薄弱な部分も無くもなかった。それに今日妹と会えば、母の意を伝えて矢代の結婚の相手をそれとなく奨める幸子の苦心も、想像していて先ず間違いのないことだった。
 海に面した丘の上の病棟で矢代は初めて幸子と会った。見たところ妹は病人らしい様子が少しもなかった。円顔で頭の廻りの早そうなくるくるした眼は、いつも兄の考えを通り脱け、勝
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