隅隅の清らかさを想像して、自然にそこから生れて来た肉体や、建物や食物の好みが、およそ他の国のものとは違う、緻密な感覚で清められて来たことなど、瞬間のうちに彼には頷けた。しかし、今は矢代はそんなことも、特に考えようとしたのではなかった。
もう街は遅くなっていたので人通りも少く、電灯も暗かった。彼は寿司屋を出てから、行きつけのおでん屋の方へ歩いてみた。日本を出発する前にいつも歩いた自分のコースを、またそのように歩いてみたくなったのだが、歩きながら彼は、これからの来る日も来る日も、こうして自分は同じ所を歩き、一生を過すのかもしれぬと思った。すると矢代は今までとは打って変って、急にぐらりと悲しくなった。今までの旅中はある街に着いても、二たびここを見ることもなく、明日は旅立って行くのだと思ったのに、今はそうではなかった。もうここは旅の納めで明日からここを動かぬのだった。ここは自分の生れ出た土地で、墳墓の地だと思い、いつの間にか人は識らずに自分の屍を埋める場所を、こんなに探し廻っているのだと思った。その過ぎた月日の物思いも、停ってみれば、停ったところからまた、月日がめぐってゆくのであろう。そう思
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