そうに見える無造作な南が、必要なことだけ忘れずに覚えているのも、日本人らしいと思って感心した。
 やはり日本人はこれで良いのかもしれない。云うことがもぞもぞとして下手だったが、南がいると、車中の外人らも無事に皆おさまって来たと矢代は思った。それも特別に人の注意を牽くわけでもなく、また合理的なところもなければ鮮かな身振りもなかった。
 背が小さく出っ歯で、小肥りなうえに開けッ放した唇が厚くいつも唾で濡れていた。そのくせ父親らしい均衡があって、温和な円い眼だけが笑いを湛えているので人の集りに生ずる隙間を、誰よりも一番確実に南が満たして列車とともに流れていた。
 矢代は寝ながらも、下にいつも一緒にいた南の和らかな平凡さが、急にこのときから面白くなって来た。国境なども南のようだと取り立てて厳しくも見えず、人もまたそのまま通過を許してしまうのだろう。
 間もなく、いつ止るともなく列車が止った。あたりに駅などあろうとも思えぬほど静な闇の中だった。矢代も南もまだ寝台から降りずにいると、ボーイが来てドアを叩き、国境へ着いたから荷物を持って降りよと云った。矢代は今までの空想が全部差し迫った事実の厳しさの
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