前で崩れるのを感じた。身支度を整え廊下へ出て行くと、隣室の外人たちもみな眠そうな顔で荷物を下げ一人ずつ車から外へ降りた。木造の低い屋根が一軒だけレールの横の窪みの中に建っていた。その屋根を踏むように見降ろしながら坂を降りて行くのに、皆の口から吐く息がもう白く眼立った。
 よく食堂で矢代と向き合った同車の静かなソビエットの士官たちは、いよいよ配備先へ着いた緊張した表情で、腰のピストルの位置をなおし、駅から闇の中へ消えていった。みなそれぞれ勤めの目的がここではすべて、日本を相手として守備につくためになされているのかと思うと、矢代は、いつも食堂で謹直だった士官の様子が、またあらためて思い出された。
 乗客らは待合室へ降りてから、手擦れて木目だけ浮き上った粗末なテーブルに荷物を乗せ、一列に並ばせられた。人のあまりいない待合室からは、外の闇ばかりが見えるだけで、鈍い電灯の周囲に薄霧がむれていた。荷物の検査はどうしたものか容易に始まりそうもなかった。合服の襟を立てたくなるほどの冷たさにときどき矢代は胴を震わせた。油の黒く滲んだ床下に麻縄が解け紊れていて、一見工場の事務室のような待合室は、ソビエット
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