これらの組のものとは別に、アメリカの新婚夫婦が一組いたが、この二人だけは別の世界を愉しみたいと云いたげな風で、皆の話からも脱れ、仲間に入ろうとしなかった。しかし、それぞれ西洋の文化都市から大平原の単調さの中に入り込んで来た急激な変化のために、誰も矢代同様自分の身の持ち扱いに困っているらしかった。外人に馴れた南は人好きのする笑顔で、この退屈な仲間の間を誰彼介意わずよく饒舌り、そして引っこみ勝ちな矢代の傍へ戻って来ては仲間らの身の上話をして聴かせるので、特に興味がなくとも、皆の旅の目的も矢代には知れて来た。この南は商人とはいえ、貿易商であったから、紳士を何より尊重するという風があって自分も負けずに守るべき紳士の礼儀を修得することに永年かかったらしかったが、持ち前の東洋人の無頓着さが礼儀の間から綻び出て、絶えず露出している尾っ端には気附かぬ屈託のない、朗らかな風格を備えていた。一つはそれがまた外人たちに油断を与え、笑いを立てる源ともなりつつ、この平原の中の退屈さを揉み消す作用も自然にして来たのである。
「わたしは今から十年ほど前、いっぺんここを通ったことがあるんですよ。雪が降ってましたがね。
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