れは景色というものではない。地球の胴体と云いたいような、何か神の手で引かれた無限の線の調査をしているように思われる、日日であった。初めのころこそ矢代は幾度となく天地の悠久な姿に嘆声を上げていたが、それもウラルを越してからは、一層猛威を発揮して来る天地の単調さが次第にうるさくなり、そっちの方はもう地球の有るがままに任せきりにして、こっちの人間は人間なりに、何か勝手な真似をしきりにしたくなって来た。
「まア、広いの、広くないのと云ったところで、お話になりませんな。」
 矢代と同室の南という人の好い貿易商人が、これも云うことがなくなったと見え、こういうことを云ったりした。アルゼンチンに永くいて、南北のアメリカの広さを知っている筈の南が洩す嘆声だと思うと、矢代は、自分の激しかった驚きも、よほどこれで正しかったのだと思った。
 隣室にはパリから北京へ行くというフランス人の骨董商が一人、その隣りがベルリンから東京へ行くナチスの外交官が二人、その次ぎには、二十歳前後の中国の青年と、その母親のフランスの婦人という順序で、これだけがいつも廊下で一組になって話し込み、自然な車中の隣人になってしまっていた。
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