てた心細さも手伝うのであろう、千鶴子も一言いっては黙り、またぽつりと思い出したように云っては黙った。矢代は今日は自分ひとり引き返して来る唯一の人間だったから、これで皆の客とはよほど気軽に自分も浮いているのだろうと思ったが、それにしても、千鶴子は来るときロンドンから飛行機で来ており、帰途も自分からこれにすると云い出したところを見ると、カソリックはやはり天に憧れがあるためかもしれぬと、矢代はまた自分に不可解な日ごろの千鶴子の潔癖さを考えたりするのだった。
 ブールジェへ著いたときは、出発の時間にまだ三十分も間があった。この前千鶴子を迎えに矢代の来たときよりも、芝生の緑が濃くなっているためかハウスの玉子色が一層鮮やかな感じだった。矢代はサンドウィッチとチョコレートを買い、千鶴子に持たせてから壁の航路図の前に立ってみた。
「あなたを迎えに来たとき、これを見て急に日本へ僕は帰りたくなったんですよ。安南まで一週間で飛ぶんだからな。」
 こう云って矢代は自分もベルリンへは飛行機にしてみようと思ったり、不意に千鶴子より先に日本へ帰っているところを想像したりしているうちに、もうロンドンから来たらしい飛行
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