眼にした直後の不安なせいかもしれぬとも思うのだった。あるいは日本へ帰ってしまえば、カソリックであろうと法華であろうと、さらに異とせぬ、「えい。」と気合いのかかったような爛漫たる無頓着さで、事は無事融合されてしまうのかもしれない。そんなら二人にとって一番神聖なものもやはり日本にあるにちがいない。
「まア、あなたは僕より一足さきへ帰ってみてくれ給え。何も僕はあなたを疑ったわけじゃなし、二人のために一度はしなくちゃならぬ心配を、うち明けてみたまでのことですから、黙っていたのより、気にかけた方が安全だというようなものでしょう。」
「それはそうね。黙ってて下すったのより仰言って下すった方が、やはり良かったと思うわ。」
表情までまだ矢代の云うままに流れて来る千鶴子だったが、それでももう前のような明るさはだんだん千鶴子から消えて来た。後から襲って来る不幸よりも、不幸を未然に防げたという意味にも解せられる千鶴子の力なげな様子が、またこうなると矢代には心配になり始めた。それも千鶴子の頭へ、これから帰って行こうとする日本の待ち伏せた生活が、早や波打ち上って来ているのにちがいないのである。しかし、何んと云
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