っしゃるのでしたら、あたし、何を云ったって駄目かもしれないわ。」
 と、ふとまた矢代の云ったことを真実なことと気づき直した様子の千鶴子は、夢見るような伏目のままに、
「そんなことをいつも考えてらっしゃれば、あなたのようになるのね。でも、あたしはそんなこと、もっと簡単に考えていましてよ。そんなこと、いくら深く考えたって、それや駄目なことだとあたし思うの。ここで起ったり思ったりしたことは、あたし一番変らないと思うの。本当にそう思うわ。」
「それは、君はカソリックだからでしょう。そこが僕と違うのだなア。」
 と矢代は初めてまた胸をついて来た新しい事実に内心びっくりして口走った。しかし、争いの鎮まりかけたものを再びかきたてるこの無用も、もうするだけしてしまいたいと彼は決心するのだった。
「あなたは物事を考えるのに、ヨーロッパを基準にして考えているのですよ。しかし、僕はやはり日本を基準にして考えてますからね。それだけはどう仕様もないものだと思うな。」
「それじゃ、日本へ帰ってから違うのは、やはりあなたの方が違うわけね。あたしの今の考えの方が正しいわけだわ。きっとあたしの方が正しくってよ。あたし、
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