とを考えては千鶴子に近づいていた報いが、やはり一度はこんな風に来なければならぬのかもしれぬと、矢代も瞑目する思いで静まるばかりだった。
「明日の朝お別れだというのに、こんなになっちゃ困るなア。」
 と矢代は力なげに笑って云ったものの、これは実際に困りはてた疑いだと思い、これを前の白紙に完全に戻すことはもう不可能かもしれぬと思った。千鶴子はテーブルの上の一点から視線を放さず悄れたままだったが、
「あたしの帰るときに、どうしてまたそんなこと仰言ったのかしら。あたし、あなたがいつもそんなこと思ってらっしたのが、何んだかしらいやアな気持ちよ。毎日あんなに楽しかったのに――」
「ですからそこじゃないですか。僕だって同じですよ。」
 こうなっては矢代も、もう思っていることをみんな云うべきときだと覚悟をするのだった。
「僕は前からこんなことを気づかれはしないかと、いつもびくびくしてたんですよ。何も僕とあなたが特に二人にとって、間違いなことをしているとは少しも思っちゃいないですよ。けれども、何んと云ったところで、ここは外国でしょう。ですから、あなたも僕も島流しになった二人みたいで、僕たちの心の通じるの
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