と思わず言葉を嚥んだ。事実、どこの国にいようと、結婚する意志に変りのあろう筈がないと思っている千鶴子に、初めてうち明ける危険な真相であってみれば、それに気づけば千鶴子とて気づかない前より二の足を踏み考えるにちがいなかった。
「でも、あなたそんなこと、本当に思ってらっしゃるんですの。あたしが間違うだろうなんて?」
伏目になって悲しげにそう云う千鶴子を見ながら、矢代はそれではまだ気づかれなかったかと、胸撫でおろすような気持ちになるのだった。しかし、何かすぐ真面目に答えなければならぬとすると、話は意外な傷口をますます切り開いてゆくばかりだった。
「間違いはないと云うのは、僕の方のことを云うのですがね。」
こう云って矢代は笑いにまぎらせたついでに、投げかけた暗影を一挙に揉み消す曖昧な力をさらに引き出そうと努めながら、
「つまり、あなたの方が間違いを起し易いというのですよ。」
「何んだかあたしによく分らないわ。みんなこちらのことは間違いだなんて。そんなこと――。」
低きに流れる水のようにだんだん千鶴子の疑いの深まって来るのを矢代は胸に打ち込まれる釘のように痛く感じた。まったくいつもそんなこ
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