に光りの浮いたのを見てまた坐ったが、彼が坐るとすぐ千鶴子はコップに葡萄酒を瀝いでちょっと黙った。
「明日沢山来て下さるんだから、もうお話も出来ないでしょう。ずっとブールジエまで、自動車で御一緒出来るといいんだけど、来て下さる方にお気の毒ですから、やはり飛行館までにしようと思いますのよ。」
しかし、矢代はこれ以上いては、別れが苦しくなるばかりだった。誰も監視しているもののない部屋で、別れる最後の愛情のしるしを今か今かと待ち合うのは、今日はいつもと違って気忙しく苦しかった。
「僕もいろいろなことをお話したいんだが、外国にいちゃ、何んと云っていいか、とにかく云うことすることに間違いが多いですからね。しかし、帰ればきっと僕お会いします。僕は間違いはないつもりなんですが、どういうことであなたが困られるか分らないから、それでつい、これだけは慎しむ方が良いとそんなに思いましてね。」
すると、突然、千鶴子は云いかねた顔色に変って来て黙った。矢代は自分の云ったことが云いたいこととは遠く、何か千鶴子の決心も間違いだと匂わせている全く別な言葉となり変っていそうに思われ、これは大変なことを云い出したものだ
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