るのだった。
暫くして千鶴子が立って来たとき、矢代はカソリックのお祈りをした千鶴子に気がかりな何んの矛盾も感じなかったのが気持ち良かった。千鶴子は前とは変って笑顔も生き生きとして来て、葡萄酒をグラスに瀝いでから二つ揃えた。二人はどちらも黙って葡萄酒を飲んだが、矢代は、今こんなにしていることが婚約を意味していることだとひそかに思い慎重にコップを傾けた。千鶴子の一息に飲み下す眼もともうやうやしくひき緊った表情に見え、それもみな自分の心に応じてくれた優しさだと一層喜ばしくなるのだった。
「それでは明日はお疲れだから、今夜はこれで失礼しましょうか。」
矢代は果して帰れるものかどうか自信もなかったが、気持ちの晴れたのを好機に、こう云って絡る思いをひき断る気力でうーんと力を椅子の肱に入れてみた。
「でも、今夜だけはもっとお話していたいわ。あたし。」
千鶴子は表情も動かさず、突然帰ろうとする矢代の考えを嚥み込みかねた訝しさで矢代を見上げた。
「しかし、飛行機は疲れますよ。良ろしいか。」
「でも、たった三時間なんですもの。眠らなくってもいいわ。クロイドンまでだと一時間半よ。」
矢代は千鶴子の眼
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