も帰りたいわ。帰ろうかしら。あたし。」
「お帰りなさいよ。」
と千鶴子はすかさず眼を輝かせて真紀子の方を一寸見返る様子だったが、ふと久慈と真紀子のことに気附いた素振りで急に黙ってまた歩いた。久慈は足早やに矢代を誘い婦人たちから放れていったとき、
「君、千鶴子さんとのことどうなったのだ。」
と矢代に小声で訊ねた。
「別段何んの変りもないね。」
と矢代は久慈から顔を背けるようにして答えた。
「それで良いのかい? 変らなくたって。」
「変ろうたって、変りようがないよ。」
「しかし、まアそう云ったものでもないだろう。何んとか約束めいたものでもしとくとか、何んとか方法があるからな。帰ればとにかくもう駄目だよ。」
矢代は黙っていた。
「僕が代りに相談に乗っといてやってもいいよ。何んの表現もしないというのは、こちらが困るより向うが困るんだからな。」
「とにかく、好意は有り難いが今日はそのことは、まアよそう。」
矢代はあくまで慎重な態度だった。久慈は、自分の問題が自分の中ばかりで膨れているように、矢代のも外から触られぬところに疼いているのであろうと思い返し、婦人たちが近よって来たとき話を一変
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