うに涼しく裂いて跳ねている瞼など、一きわ目立って人の視線を集めるのだった。
 矢代は近よって来たボーイを顎でさして云った。
「このボーイだよ、この男、一昨日マネージャーにここで詰めよってストライキの膝詰談判をしてたんだが、今日はどっちもけろりとして仲がいいね。習慣というものは、喧嘩にまで形式を与えて来ているのかな。」
 久慈は何も答えずそのまま階段を降り地下室の化粧室へ這入った。掃除婦が鏡に向ってひとり髪を梳いている閑そうな姿の上に電灯がついていた。彼は用をすませ、皿に金を入れようとしているとき千鶴子が上から降りて来た。久慈は財布に細かいのが見附からなかったので千鶴子に借りながら、
「君、今日はもうどこへも用がないの。」と訊ねた。
「ええ、これから版画のお土産でも買いに行こうかしらと思ってたとこなの。ね、一緒にお見立てして下さらない。でも、真紀子さんにいけなければ、御遠慮してちょうだい。」
 白銅をハンドバッグの中から出し、千鶴子はもうみな分ってるのよときめつけるような冷たさで、ぴちりと皿の上に白銅を置いた。擦れ違いざま久慈は、不必要なまでに厳しい金属性の響きが髄に刺さるのを感じた。そ
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