点けと火消しの立廻りだ。」
自分に触れる話を避けてそう云う矢代に、久慈はふとびくりとして、自分もひとり胸中の何物かに火を点けたり消したりしているなと思った。街路に向って籐椅子を集めたあたりのテラスには、いつもの顔馴染の客たちがだんだん集って来た。およそ百人あまりもいるかと思えるそれらの中には、新しい顔も混っていたが、誰からともなく客の素性の聞えて来ているところを見ると、さも互に無関心らしくしている外人たちとはいえ、これでいつとはなく、話のついでに落ち合う客の話も洩れているのだろうと久慈は思い、自分や矢代や千鶴子、真紀子のことなども、おぼろに彼らの頭の中にも何かの影を与えているのだろうと想像された。いずれも各国から集って来ている火消しか火点けかにちがいない客たちだったが、パリでもこのドームは特種に名高いところと見え、郊外遠くで拾った自動車もただこのカフェーの名を一口云えば、忽ち通じて車の動くほどの便利さだった。初めは気附かなかったことだが、このようなカフェーのテラスでも、久慈たちの一団はいつの間にか生彩を放った組となっていた。千鶴子と真紀子が現れると、うるみを帯んだ繊細な肌を鳳の眼のよ
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