めばかりでもないらしく、真紀子は無造作に笑ってちらりと久慈の顔を見た。その笑顔も一度は云っておかねばならぬことを思い出したという風に、
「それよりあたしこう思うの、いけないようにお話とらないでね。その方がつまらないこと考えずともいいんですから。――あたし、御存知のように勝気な性質でしょう。ですから、結婚のお話だけはどちらも出来る限りしないことにしましようね。あたしの家はそれや複雑な家ですから、考え出すととても駄目。」
 こちらでの出来事はすべてこちらだけとしてすませたい真紀子の希望は、昨夜千鶴子からも云われたように、久慈にも意外なことではなかった。しかし、また昨日のようにいきなり俳句を持ち出して自分を怯ませた真紀子の勝気が、こんな出来事の後までもつづくものとは久慈も予想しなかった。久慈はセザンヌを見た後の幸いな後味を崩したくなかったので、そのまま真紀子の隠された意志を追求してみる興味はもう感じなかった。そうして暫時、彼は暖味な微笑で両手を頭の後ろに組み、絶えず噴き上っては変化する噴水の色を眺めながら、まだ午前の思って見たこともなかった空虚な豊かさを持ち扱いかねているのだった。
 噴水は
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