探し求める謙遜な気持ちにふとなって来るのだった。
「ただ何んでもない、何んでもないことが肝腎なんだなア、つまり。」
久慈はこんなことをひとり呟いて真紀子と一緒に絵画館を出ていった。彼は階段を降りながらも、夾雑物のとり除かれた眼にいつもより深く真紀子が映るように感じた。真紀子も照りつける日光に眩しげに首をかしげつつ明るく嬉しそうだった。二人はチュイレリイの廃墟の跡を横切って花壇の方へ出ていった。アマリリスやカンナ、スミレなどの咲いた花壇の中に噴水があった。その傍のベンチに休むと、前方の広場に幾つも上っている高い噴水も一緒に眼に入り、あたりは日に輝き砕ける水柱にとり包まれた爽やかな競演を見る賑やかさだった。
久慈はどんなことが頭に流れて来ても懼るるに足らぬと思い、出来事も昨夜のことなどはもっとも自然なことのうちの、とるに足らぬ一つだったのだと思った。
「ウィーンから手紙来ることあるの。」
暫くして、久慈はまだ訊き忘れていた真紀子の別れた良人のことを、このときを機会に一度はっきり質しておきたくて訊ねてみた。
「たまには来るの、だけどその方は御心配いらないのよ。」
強いて安心を与えるた
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