来だって考えてる。」
 矢代は案外真面目に突かれた驚きを色に出して反抗した。
「そんな未来は未来じゃないさ。」
「しかし、そんな未来って、僕の考えてる未来はあなたに分らないじゃありませんか。」
「分るさ。君のいつも云うことは人間の過去の美しさを信頼して物事を考えてるだけだ。それじゃつまらん。過去なんかいくら美しかったって、良かったって、何になる。あそこの二人の論争だって、フランスとドイツの良い所ばかり云い張っているだけで、過去ばかりより考えていないからいつまでたってもあの醜態だ。傍から水をぶっかけたって、まだ水の中で云い合いしとる。はッはッはッは。」
 東野は笑いながらすっと立ったかと思うとそのまま飄然と外へ出ていってしまった。矢代は理由もなく殴りつけられたようで後を追っかけて行く気もしなかったが、それでも他人の非難は一度は慎重に考えたくなり、再度の武装の具足を手足に巻き固めたくなるのだった。
「分らないな。僕が未来を考えないって、どういうことだろう。またこれは喧嘩の種が一つ落ちた。」
「だって、東野さんでも俳句お作りになるんじゃありませんか。あんなのもやはり未来の美しさなのかしら。」
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