どうしたのです。それはあなたの失敗なんですか。」と久慈は重ねて訊ねた。
「いや、工場へ這入る前に庭で二三分待たされましたから、多分そのときどっかから光線をあてて透してしまったのだと思います。」
聞いていた者らの顔色はさッと変って黙った。久慈も一瞬無気味な寒さに襲われた。しかし、考えればそんなことは当然のことで別に怪しむに足りぬことだと思った。眼に見えぬ光線を透されたのは写真の種紙ばかりではない。この部屋に集っている東洋人の頭の中の種紙も、誰も一様にある光線にあてられすでに変質してしまった頭になっていた。表面の顔は変らぬながらも、一言もの云えば無数の手傷を負った頭を直ちに暴露するのである。またそれらの頭の変化の仕方は久慈型か矢代型かのどちらかであり、もう一層激しいのは隣室の中国人同様全く西洋の模倣そのままの頭だった。
隣室の中国人の集りはわけてもこの変化が極端であった。場所の不潔さは面を蔽いたくなるほどだったが、ホールではテーブルを囲んだ男たちの中へ誰か一人中国の女が来ると、同時にさッと皆が立ち不動の姿勢で女の腰を降ろすまで直立して待っていた。女は椅子の背に露わな腕を廻した不行儀な横
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