東野を気の毒がって彼ばかりに話した。東野は日本流の手相を見てやろうと云ってそのカルメンの手を開かせたり、イタリアへそのうち行きたいのだがいつが良いかと訊いたりしている間にも、久慈と矢代は元気よく踊りつづけていた。そのうちに二本だった皿の柱が三本になり始め、雨後の筍のような美しい節を揃えてそれぞれテーブルの上で競い立った。
「これは面白い、真剣勝負をやっとるな。」
と久慈は云うと、まるで育て上げた子供の背の高さを見る風な楽しげな眼つきで皿の柱を眺めていた。
「とうとう自然に還ったか。」
と東野は云ったが、客の消費量を隠そうともせず眼の前に見せつけつつ時間を奪う、これでもかという遣り口に矢代はもう反抗心を起して来たらしい。
「よしッ、もっとやれ。」
と云うと彼はシャンパンを自分で注いで踊子たちにも振り撒いた。一歩斬り込んで来たようなこの矢代に、久慈も負けてはいなかった。口に上げるコップのシャンパンが半ばは手の甲にこぼれてしまうほどだったが、それでも立って踊りにいってはまたシャンパンを胸までこぼした。この間にもほとんど休んだことのないバンドは、目的物に肥料を与えるように皿の柱を延ばすの
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