だった。
 ひと踊りすませて戻って来た久慈は、椅子にどかりと凭れたとき、ふとまたその皿の柱が眼についた。すると、突然その柱の形態から、ノートル・ダムの内陣の四隅の屋根を支えている、脊椎のような細かい節を無数に積み重ねたあの柱を思い出した。
「あ、ここはこれやお寺だ。」
 と思わず久慈は声を上げた。
「お寺だ? そうかもしれんぞ、どうもお経を誦まれているような声がするよ。よし、もっとやろう。」
 と矢代は云ってイタリア人とまた踊った。いつ誰がどうして飲むのか分らなかったが、妙に皿だけが不思議な速度でひとり勝手に延び上った。
「こ奴、まるで知性みたいな奴だな。」
 と久慈は皿が眼につく度びに、「ふふ。」とひとり笑ってシャンパンを飲んだ。マネージャーは一同の笑いさざめいているときでも、一片の笑顔も見せず、黙黙と現れ、細心の注意をもって氷の中のシャンパンの面を廻しては皿を積んでまた姿を消した。東野は久慈と矢代の張り合いがいつ果てるとも分らぬのを感じたのであろう、軍配を上げるように、
「さア、もう帰ろう。」
 と二人に云うとイタリア人に勘定を云い附けた。すぐ来たビルを見ると二千フランあまりになっ
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