ていたら、後ろから突然首を締められて、三十分ほどしてから気がついたら、自分がここの坂の真ん中で倒れていたとか云ってらしたな。」
と東野は云ってそのあたりを見廻した。森森とした坂の中で東野の声はよく響いた。古びた血のような色の建物はみな窓を閉めていて、道の割石の弛んだ隙間がタッチの凄い鱗のように黒くうねうねと這い昇っていた。
「今夜はどういうもんか、論争がしたくて仕様がないな。山にいたからかね。」
と矢代は低く呟いた。
「相手に不足はないぞ。」
笑いもせず見返る久慈の精悍な額へ青葉を透した瓦斯灯の光りが鋭く流れた。
「もうどこもかしこも政治の話ばかりだが、これで巴里祭の右翼と左翼の衝突が見ものだな。君らの論争も良い加減に結論をつけておかないと、七月十四日には血を流すぞ。」と東野は坂路の息苦しさに立ち停りながらもひとり笑った。
「昨日はもう人民戦線の歌が出来たというからね。国歌はマルセエーズじゃなくて、人民戦線の歌だというのだ。」
そういう久慈に矢代は、
「右翼のマルセエーズが革命歌じゃないか。それへまた革命歌か。」と面白そうに笑った。
「幾度革命が来たって、お寺だけはいつまでもあ
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