「じゃ、野蛮人の名残りだな。」
「しかし、盆栽みたいに陶器で包んで丸薬にしたんだからね。ここまで来るのも、相当永い旅をしているよ。」
「こういうものを食っちゃ、これや、戦争には負けだ。」と、遊部は源五郎鮒の卵巣を箸で突っついて、一口舐めた。
「誰もしかし、良い潮どきに帰って来たよ。これからはどこの国の歴史も、見知らぬところを旅するんだからね。僕らはまアやっと間にあって、先ず何よりそれが良かった。君もだ。」と東野は隣席の久慈の盃に酒を瀝いだ。そして、また、
「僕はパリじゃ、君にぽんぽん当り散らして失礼したが、もうあんなことはやらないよ。当時は実際失礼した。随分僕らは苦しかったり、愉しかったり、しかし、考えてみると、何んだかよく分らないね。君もだろ。」
「うむ。」と久慈も頷いて東野に盃を返した。
「それで良いのだよ。分ったら嘘だ。事物の自然化だとか、科学化だとか、そんなことを云ってる暇に僕らの生命力は、誰やらじゃないが、榴散弾みたいに進んでゆく。二度と同じことを繰り返さないよ。新しくなるばかしだ。西洋が良いの、東洋が良いのといったところで。おい、君、僕は近ごろ女房を亡くしてね、このごろじゃ
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