憂いを共にしている一団ながらも、その中から急に寛いだ笑いが立った。
「おい速記たのむよ。座談会そこから始める。」と司会者はまた機を捉えて催促した。
しかし、速記が始まると、さすがに誰も開こうとするものがなく、そこから再び会は頓挫した。矢代はこの頓挫でほっとした。何を云おうと今は無駄だと思ったからだった。出て来る料理につれてしばらく雑談がまだつづいたが、そのうちにこの夜は騒ぎもなく早い散会になった。大玄関から闇の中へ散り出ていく肩口も、平和な日の会合はこれで最後だと思う、名残り惜しげな姿もあり、出る膿なら踏み潰せ、と云いたげな軒昂な肩も見えた。しかし、どのようなことがあろうと、今日はふたたび昨日には戻らぬ訣別の面影ただよう背に、それぞれ灯火をうけた恭倹な帰りとなって散り行くのだった。
燃えるようなカンナの花茎に黒くまつわりのぼる蟻が見られた。真夏が烈しい暑さで迫って来ても、戦いはやはりつづいた。それは締めくくろうとする緊張した力の闇から、めり出す風にのび拡がり、やがて動員令が出た。新しく編成された軍隊の動きが活溌になっていくにつれて、炎天に振られる旗の数が街から街へ急激に増して
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