洋の面面へも迫って来たのである。他人事ではないときに、他人事を憂えるに似た観念の弱さを感じる反撥も手伝い、これを自分の強さに変じる作用あってこそと覚悟する、別の気力も、またそのうち一同の中から燃えて来た。
「戦争は何も、地震のように突然起って来た偶然のことじゃない、拡って来た人事で必然だ。そんなら、ヒューマニズムにつながる根本のものじゃないか。文化人として、今こそやらずにどうする。」
こういう文学者も一人出て来た。
「しかし、ヒューマニズムは、ルネッサンスの人本主義から出て来ているものだからね。それからやるとなると大変だよ。」
何も云いたがろうとしない哲学者は、そう云ってまた黙った。
「解釈はどうだっていいよ。ヒューマニズムの心情だ。われわれの心だ。心をそのまま抛ったらかして、狼狽えるわけにはいくまいじゃないか。」
「戦争が起れば、誰も彼も自分の意志ばかりで物を云おうとするからね、意志ばかりで云っちゃ、戦争は負けだよ。冷然とした判断力が何よりだ。」
と、このとき横からこう云い出したのは、隅の壁にもたれかかり、今まで黙っていた科学者だった。
「意志で云わなくちゃ、何んで云うのだ。」
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