たときふと自分の運命に影響を及ぼしそうな突風を身に感じたことも、さらにまた彼は思い出すのだった。一ヵ所の戦争はそこだけで鎮る筈もない。地表を蔽った武器の爆薬の堵列した進行のさま、鉄、石炭、石油の獲得、も早や後へは退けぬ、せり合う戦備の雲行き烈しい各国の目まぐるしさも、矢代は見てきた。パリでは、一時日華の戦争いよいよ開始という大見出しの記事さえ掲げられ、行き交う人人の眼を奪った日のことも、実は、今日の予震のようなものかもしれなかった。そのころは、ジュネーブ聯盟の破滅を中心に、暗雲ますます色濃く垂れさがるばかり、と憂えた朝野の声声の末端、犇めき擦れあう思想の火の手も、危機のふかまり進む車輪のごとく音響を立てていた。視れば、ヨーロッパのどこも発火点で充ちていた。怨恨つみあがり、鬱情す走る十重、二十重の心根の複雑さを、機械の食い破ってゆく日が来たようであった。民族も宗教も、政治も経済も、文明も思想も、ばりばりと歯車の歯の中にめり崩れて行きそうだった。
「西洋と東洋のヒューマニズムの相違について」
この夜、このような議題が一同の間で発案されたことも、無理からぬ時だったが、しかし、今は火の手は東
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