から始めます。本日は意外な興奮というより、形勢ただならぬ重大な日となりまして、座談の内容も苦しい色を帯びるかと思われますが、片づけて置くべきことは、今のうちに片づけねばならぬと思いますので、元気一番、御意見をお洩し願います。」
「今日はもう止めよう。」と云うものがあった。半畳ではなく、今さらヒューマニズムという抽象的な議題には感興を覚えない、一同の意識を代表した声かと見えた。
「一切のことは、どうでもいいよ。それより軍備の充実、経済力の拡張だ。」
 ぴしりと、ひびき強く、一人のそういう文明評論家があった。皆これには笑い出した。が、その笑いを吸い取ってゆく明快な判断には、大正の末以来、観念に悩まされた一同の過去に対する潔癖な逆襲がひそんでいた。それは人間の逆襲というよりも、好機を見つけて狙い定め、急襲して来た現実の胴震いのような厳しさだった。
 戦争はもう起っているよ、本当の平和は戦争だ。と、アメリカを廻って来た東野が、入港して来て横浜へ降りるなり、スペイン反乱の有様をそう云った日のことなど、矢代は思い出したりした。塩野と街を歩いていた去年の晩秋、西安で蒋介石が誘拐されたということを聞い
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